Jira Server 8.3 へのアップデート(Linux)
このページでは、インストーラーを利用して Jira Software の Server 版をバージョンアップする手順について紹介します。
Jira Service Management, Jira Core についても同様の手順でバージョンアップをすることができます。本ドキュメントでは以降 "Jira" と表現しますので、ご利用されたいアプリケーション(Jira Software, Jira Service Management または Jira Core)へ読み替えてください。
目次
はじめに
このドキュメントでは、既存の Jira をアップデートする基本的な手順について説明します。
クリーンインストールとは異なり、アップデートではお使いの環境にあわせた調整が必要になることがあります。 ここで紹介する手順を参考に、環境に合わせた作業を行なってください。
既存の Jira は、以下の環境にインストールされていると想定します。
Jira のバージョン | 7.13.5 (Linux 64 Bit Installer版) |
---|---|
プログラムディレクトリ |
|
データディレクトリ |
|
コンテキストルート (URL でサーバー名に続く文字) | /jira |
インストールを実行するユーザー |
|
Jira 稼働ユーザー |
|
DB | Jira と同一のコンピュータにインストールされた PostgreSQL を利用(今回は jira を使用) |
java | Jira に同梱の JRE を使用 |
WEB サーバー | Jira に同梱の Tomcat を使用 |
サーブレットコンテナ | Jira に同梱の Tomcat を使用 |
起動方法 | サービスとして登録し、自動起動する。 |
この環境を Jira 8.3.0 にアップデートします。
1. 既存データのバックアップと準備
アップデート作業前に、必ず以下をご確認ください
ライセンスが有効か?
いまご使用いただいている Jira に有効なライセンスが設定されていることをご確認ください。ライセンスが失効しているか、有効なライセンスキーがわからなくなっているときは、弊社までお問い合わせください。アップデート後の Jira と、JAVA などの互換性の確認
ご使用中のオペレーティングシステムとデータベース、JAVA などがアップデート予定の Jira で利用できることを確認してください。必要なバージョンは、サポートプラットフォームのページでご確認いただけます。更新前とアップデート後の Jira のバージョンの組み合わせについて
お使いの Jira のバージョンと、アップデートしたい Jira のバージョンの組み合わせによっては、一度にはアップデートできない場合があります。
詳細はAtlassianドキュメントをご確認ください。Atlassian Crowd でシングルサインオン設定をされている場合
バージョンアップ後、シングルサインオンの設定ファイルが初期値になります。 シングルサインオンのために seraph-config.xml をカスタマイズしている場合は、手動で移行する必要があります。セキュリティソフトの有無
ウィルス対策ソフト、セキュリティソフトが動作していると、アップデートが失敗することがあります。これらが原因でアップデートに失敗していると思われるときは、一時的にウィルス対策ソフトやセキュリティソフトを無効に設定してください。リハーサルの実施
実際に運用している Jira をアップデートする前に、テスト環境でアップデートのリハーサルを行なってください! テスト環境でのリハーサルを行い、十分に動作確認をされた後に、実際に運用している Jira をアップデートしてください。
まず最初に、作業が失敗した場合にデータを復旧できるようにするため、Jira のバックアップを作成します。 また、このバックアップ操作は、サーバ移設も伴う場合に、新しい Jira へのデータの移行時に使用します。
作成したバックアップに漏れがあると、新しい Jira にデータを移行したり、データの復旧ができなくなったりする可能性があります。 作業漏れがないように注意するとともに、作成したバックアップは安全な場所にコピーを保存しておくようにお願いします。
1-1. Jira のバックアップを作成
ここでは、Jira 標準機能を利用する方法と、データベースのバックアップ機能を利用する方法の2通りをご案内します。
なお、Jira を仮想サーバー上で動作させている場合は、仮想サーバー単位でバックアップを作成していただくのが安全です。
バックアップ方法についてのご注意
Backing Up Data (英語) に記載されています通り、
Jira 標準機能の XML バックアップは、実施中に Jira サーバーへ大きな負荷がかかることや、Jira をロックせずに実施するため、バックアップデータの整合性が保証できないことから、Atlassian では推奨しておりません。
① Jira のメニューからバックアップを作成する
Jira よりXML バックアップを作成する
管理者ユーザーで Jira にログインし、画面右上の歯車アイコンより「システム」画面を開きます。左側メニューの「システムのバックアップ」をクリックします。
Jira データのバックアップ画面が開きます。「ファイル名」テキストボックスに作成するバックアップファイルの名前を指定して「バックアップ」ボタンをクリックします。
バックアップが終了すると、作成したバックアップファイルの名前がフルパス名で表示されます。
ファイル名の拡張子として、自動的に「.zip
」が付加されます。バックアップファイルは、表示されているディレクトリ内に作成されます。
下の画面の例では「/var/atlassian/application-data/jira/export
」です。
添付ファイルをバックアップする
添付ファイルは作成したバックアップファイルに含まれないため、ディレクトリごとコピーします。
ここでは、作成したバックアップファイルと添付ファイルを保存用ディレクトリにコピーする方法を説明します。
バックアップの保存先ディレクトリとして ~/work/Backup_Jira(別の位置でも構いません)を作成し、そのあとバックアップファイルと添付ファイルをコピーします。 添付ファイルはディレクトリごとコピーします。
# mkdir -p ~/work/Backup_Jira ←バックアップの保存先ディレクトリを作成 # cd /var/atlassian/application-data/jira/export/ ←バックアップ出力先にカレントを移動 # cp Backup_20190906.zip ~/work/Backup_Jira/ ←バックアップの圧縮ファイルを保存先ディレクトリへコピー # cp -r /var/atlassian/application-data/jira/data/ ~/work/Backup_Jira/ ←添付ファイルを含むディレクトリをコピー # ls -l ~/work/Backup_Jira/ ←コピーしたファイルを確認 合計 56 -rw-r--r--. 1 root root 69038 9月 6 13:54 Backup_20190906.zip drwxr-x---. 3 root root 25 9月 6 13:56 data
② データベースのツールでバックアップを作成する (PostgreSQL)
Jira の使用しているデータベースをバックアップします。ここでは PostgreSQL を例にして手順を説明します。その他のデータベースシステムをご利用の場合は、データベースシステムのマニュアルをご確認ください。
PostgreSQL のバックアップには、pg_dump コマンドを使用します。以下に pg_dump コマンドでバックアップを作成する例を挙げます。この例では、バックアップファイル内にデーターベースを復元するためのコマンドが出力されます。
データ量が膨大な場合などは、アーカイブ形式でバックアップを作成することもできます。詳細は pg_dump コマンドのリファレンス などを参考にしてください。
# su - postgres ←PostgreSQLを使うためにユーザーを変更 -bash-4.2$ pwd ←カレントディレクトリを確認 /var/lib/pgsql -bash-4.2$ mkdir work ←バックアップ先ディレクトリを作成(1) -bash-4.2$ cd work -bash-4.2$ mkdir Backup_Jira ←バックアップ先ディレクトリを作成(2) -bash-4.2$ cd Backup_Jira -bash-4.2$ pg_dump jira > jira_backup ←pg_dumpコマンドでデータベースのバックアップを作成 -bash-4.2$ ls -l ←作成したバックアップを確認 合計 472 -rw-r--r--. 1 postgres postgres 540701 9月 6 14:04 jira_backup
tar コマンド等を利用して、Jira のホームディレクトリのアーカイブファイルを作成します。
# cd ~/work/Backup_Jira/ # tar -cvf Backup_20190906.tar /var/atlassian/application-data/jira ←tarコマンドでJiraホームディレクトリのアーカイブを作成 # ls -l ←作成したアーカイブファイルを確認 合計 255308 -rw-r--r--. 1 root root 261365760 9月 6 14:07 Backup_20190906.tar -rw-r-----. 1 root root 69038 9月 6 13:54 Backup_20190906.zip drwxr-x---. 3 root root 25 9月 6 13:56 data
1-2. Jira アップデートチェックを実施する
Jira の持っている The Universal Plugin Manager を使用することで、
インストールされているアプリがアップデート予定のバージョンでも利用できるか確認できます。
管理者ユーザーで Jira にログインし、画面右上の歯車アイコンより「アプリを管理」画面を開きます。
画面下部の「JIRA update check」をクリックします。
「アップデートの互換性チェック」ドロップダウンリストで、アップデート予定のバージョンを選択します。
ここでは「8.3.0」を選択しました。バージョンを選択できたら「チェック」ボタンをクリックします。
ご使用中のアプリについて、互換性に問題のあるもの、問題のないものなどに分類されて表示されます。簡単な対応方法も表示されますので、参考にして対応を行なってください。
基本的に、互換性のないアプリの場合はいったん無効にしてからアップデートを行うことになります。使用予定のバージョンに対応したアプリがあるかは、各アプリの配布ページ、作者にご確認ください。
2. アップデートインストール
バックアップの作成、アップデートチェックを行い、バージョンアップに問題がなければ実際のインストール作業を行います。
2-1. 新バージョンのインストールファイルを入手する
新規に Jira をインストールしたときと同様に、Atlassianのサイト からインストール用ファイルをダウンロードします。
Linux 64 Bit 版をダウンロードして適当なディレクトリに保存してください。
2-2. 設定ファイルの確認
インストール時と同様にコマンドプロンプトからインストーラを実行するとアップデートが実行されます。
アップデートを行うとき、Jira のインストーラは既存の XML ファイルなどから設定を読み取り、アップデート後の設定ファイルに反映します。
ただし、反映可能な設定は以下のものに限られています。
server.xml
に記載されているポート番号 (コンテキストルートは引き継がれません)setenv.sh
に記載されている以下の環境変数JVM_SUPPORT_RECOMMENDED_ARGS
…… JVM(Java仮想マシン)に与える引数JVM_MINIMUM_MEMORY
…… JVMの使用する最小メモリサイズJVM_MAXIMUM_MEMORY
…… JVMの使用する最大メモリサイズ
…… JVMのPermanent領域の最大サイズJIRA_MAX_PERM_SIZE
これら以外の方法で設定を変更している場合は、アップデート完了後に手動で設定を反映させてください。
2-3. アップデートインストールを実行する
実際にアップデートインストールを実行したときの例を以下に示します。
ダウンロードしたインストーラファイルに実行権限を付与します。ls -l
コマンドでファイルの権限を表示したときに、実行権限 “x”
が付いていることを確認してください。
# chmod 744 atlassian-jira-software-8.3.0-x64.bin # ls -l atlassian-jira-software-8.3.0-x64.bin -rwxr--r--. 1 root root 376011851 9月 4 10:35 atlassian-jira-software-8.3.0-x64.bin
インストーラを実行してアップデートを開始します。最初にインストールを続けてもいいか確認されるので、[Enter] キーを押して続けてください。
# ./atlassian-jira-software-8.3.0-x64.bin Unpacking JRE ... Starting Installer ... This will install JIRA Software 8.3.0 on your computer. OK [o, Enter], Cancel [c]
次にインストール方式を選択します。アップグレードインストールを行うので、[Enter] キーを押してください。
Choose the appropriate installation or upgrade option. Please choose one of the following: Express Install (use default settings) [1], Custom Install (recommended for advanced users) [2], Upgrade an existing JIRA installation [3, Enter]
インストール先ディレクトリの確認を行います。インストール時に変更していなければ、そのまま [Enter] キーを押してください。
Existing installation directory: [/opt/atlassian/jira]
インストーラによる Jira ホームディレクトリのバックアップを行うか確認します。バックアップを作成してインストールを続けたいので [Enter] キーを押してください。
Back up JIRA home directory The upgrade process will automatically back up your JIRA installation directory. You can also choose to back up your existing JIRA home directory. Both directories are backed up as zip archive files in their respective parent directory locations. We strongly recommend choosing this option in the unlikely event that you experience problems with the upgrade and may require these backups to restore your existing JIRA installation. If you have many attachments in your JIRA home directory, the zip archive of this directory may consume a significant amount of disk space. Back up JIRA home directory? Yes [y, Enter], No [n]
設定ファイルの変更内容を確認します。インストーラが変更されたファイル、削除したファイル、追加されたファイルを検出し、リスト表示します。内容を確認して [Enter] キーを押してください。
Checking for local modifications. List of modifications made within JIRA directories. The following provides a list of file modifications within the atlassian-jira directory. Modified files: conf/server.xml Removed files: (none) Added files: n conf/.server.xml.swp conf/server.xml~ [Enter]
アップグレードチェックリストが表示されます。すべてが完了している場合は [y] キーを押してください。
Checking if your instance of JIRA Software is running Upgrade checklist Complete these steps to have a smooth upgrade experience. If you need more details, see https://docs.atlassian.com/jira/jadm-docs-083/Preparing+for+the+upgrade. 1. Run a Jira health check Run a Jira health check to verify that you're ready to upgrade. Make sure that checks related to the license and database have passed, but you can also fix other detected problems. 2. Check app compatibility Make sure your apps are compatible with the Jira version you're upgrading to. Disable all incompatible apps, so they don't affect your upgrade. 3. Back up the database Back up the Jira database using your database's native backup tools. Have you completed all these steps? Yes [y], No [n, Enter]
アップデートインストールを実行してもいいか、最終確認を行います。[Enter] キーを押してインストールを実行してください。
Your existing JIRA installation is about to be upgraded! The upgrade process will shut down your existing JIRA installation to complete the upgrade. Do you want to proceed? Upgrade [u, Enter], Exit [e]
アップデートインストールが実行されます。
Jira を起動するか聞かれるので好みに合わせて選択してください。
Your instance of JIRA is currently being upgraded. Shutting down JIRA... Checking if JIRA has been shutdown... Backing up the JIRA installation directory Backing up the JIRA home directory Deleting the previous JIRA installation directory... Extracting files ... Please wait a few moments while JIRA Software is configured. Installation of JIRA Software 8.3.0 is complete Start JIRA Software 8.3.0 now? Yes [y, Enter], No [n]
2-4. インストール後の動作確認
Jira を起動するとブラウザからアクセスできるようになります。
ご注意ください
server.xml
に設定していたコンテキストルートは引き継がれていません。
ブラウザーで Jira にアクセスするときは、http://(サーバー名 または IPアドレス):(ポート番号)
を開いてください。 または、server.xml
を変更後、Jira を再起動してください。
Jira にアクセスして、以前と同じ ID とパスワードでログインできることを確認します。
アップグレード完了の画面が表示されます。
「Jiraへ移動」をクリックします。
つづけてダッシュボード画面が表示されます。
アプリの管理画面を開き、必要なアプリが利用できるようになっていることを確認します。
2-5. アプリケーションアクセス権限の確認
既存のユーザーが Jira Software の機能を利用できるかを確認します。
Jira 管理者権限で Jira へログインし、画面右上の歯車アイコンより「アプリケーション」を選択します。
左側メニューの「アプリケーションアクセス」をクリックし、Jira Software を利用できるグループを確認します。
利用できるグループを追加する場合は、「グループを選択」より追加をお願いします。
「既定」チェックボックスにチェックを入れた場合は、新規ユーザー作成時にチェックしたグループに自動的に所属します。
アプリケーションアクセス設定に関しての詳細は、 Jira Software ユーザーとアプリケーションアクセス設定 をご覧ください。
その他の操作も行なって、以前と同様に Jira が利用できることを確認してください。
リハーサル環境で正常稼働が確認できたら、本番環境へも同様にアップデートインストールを行います。
最終的に、本番環境で正常に動作していることが確認できたらアップデート作業は終了です。
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